ELVES BIKE FALATH PROを組付け:新興ブランドとショップ対応について

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台湾の新興ブランド「ELVESBIKE(エルベスバイク)」のエアロロード「FALATH PRO」を組付けしました。

今回、お客さんが自身でELVESからフレームを購入し、当店へ持ち込みされました。
今まで乗っていた車体からコンポやホイールを移植し、フレームは下取りとなりました。

とういうことで、今回は格安な新興ブランドELVES BIKEの組付けについてと、こういったブランドに対する考え方やショップの対応について記事にしたいと思います。

ケーブルフル内装のカーボンエアロロードが10万円台

私自身初めて見たELVES BIKEですが、専用のステム一体型ハンドルでヘッドの中にケーブルが入っている、いわゆるフル内装と呼ばれるフレームセットで、今風なカーボンバイクメーカーです。
それでいて価格は一体型ハンドル込みでなんと10万円台。

この手のフレームは、例えばTREK MADONEやCANYON AEROADなどはだいたい50万円くらいと、このFALATH PROの約3倍くらいはします。
仕様だけみれば有り得ない価格です。

実物を見たところ、バリも少なく、非常にきれいな印象で、まず10万円台とは思えないです。

もちろん組付けをしていると、改良が必要な点やクオリティを感じる部分はありますが、昨今の無闇矢鱈に高級品化している流れで、ロードバイクの敷居がどんどん上がってしまっていますが、こういった新興ブランドが一石を投じる価値は大きいと思います。

次に組付けについての内容と感想を少し書きますが、こういった新興ブランドは価格が安いだけあって、やはりどうなのと思うところはありますが、それらを無闇に論って大ブランドをヨイショする気は全くないです。

まずは完成した車体を写真をご覧ください。
かっこいいですね、間違いなく。
このフレームセット10万円台ですよ。レートによりますが、フレームセットだけだったら10万円台前半です。

この手のブランドははじめは安く販売して話題性をつくり、そこから改良を繰り返してブランド価値を上げ、値段を上げていくという流れがほとんどです。
例えばDAREなんかはむしろ高級ブランドになりました。

ELVES BIKE FALATH PROの組付け作業

それでは組付けの様子を紹介します。
とはいってもケーブルの内装がややこしいだけで、他は特に変わりないのでそこは飛ばします。

シートポストは当然専用のカーボンエアロピラーです。
専用形状のシートポストを一方向から押し付けて固定するタイプのもので問題になりやすいのがシートポストのずり落ちです。

特にこういうシートチューブがえぐれているようなエアロフレームは、シートポストが下まで落ちるとフレームを内側から突き破ってしまう場合があります。

対策を講じているメーカーもありますが、体重も合わさって一気に下まで落ちるとフレームにダメージが入る可能性があります。

絶対落ちたくないという気持ちの表れか、シートポストには紙やすりのような強力なすべり止めがついています。
そして指定トルクはmax10-12Nmとかなり高いです。
なんとクランプパーツの最大トルクを超えています。

だいたいこういうアルミパーツは別のところで作ったものを取り寄せしているので、その辺の整合性が甘いのでしょう。

とはいえ6Nmだと経験的に落ちそうなので、ファイバーグリップを使ってメーカー指定通りに締めます。
過剰なトルクで締めて壊れても保証しないよと書いてます。

ヘッドベアリングは上下同径で、ベアリングとフォークコラムの隙間からケーブルを通します。
半円のシムで隙間を埋めて前側からケーブルを持ってくるので、ケーブルはフォークコラムに接触します。
左右のバランスを考えて配線します。

コラムスペーサーは全部で3つ。うち2㎝高のものはノーマルステムで使用するための形状になっています。
落差が出すぎるので、もう少し高さを出すためにコラムスペーサーを追加できないかメーカーに確認してもらいましたが、コラムスペーサーを追加することは想定していないという、イケイケな返事だったので、この2㎝高のものも入れて以前よりやや攻めたポジションで我慢してもらうことになりました。

普通の内装フレームと同様にインナーケーブルを通してアウターを誘導すれば難しくありません。
フロントディレイラー側のアウターケーブルはBBの下で止まるようになっていますが、アウターが止まる部分の穴の角度が垂直に立ちすぎていて、インナーケーブルを引っ張るとアウターが折れるもしくは穴から抜けてしまいます。
BOMAのALLUMER DISCもBB下でアウターが止まりますが、角度がしっかり考えられています。

仕方がないので、今回はライナーを通して、穴の手前で止めておくことにします。

リアディレイラー側はフルアウターケーブルです。
シャドウのリアディレイラーの場合、通常のアウターケーブルだと若干変速に影響が出る場合があるので、柔らか目のアウターを用意した方がいいかもしれません。

専用ハンドルの方は、なんとなくURSUSのMAGNUSとかに似ている気がしますが、ケーブルの通り方は全然違います。
出口がシフトとブレーキでそれぞれ別になっています。
普通に頑張って通します。

フルアウターでヘッド回りも配線に余裕がないので、ディレイラーからレバーまでケーブル長をぴったりにする必要があります。

配線が終われば後は特に変わったところはないので、普段通り組んでいきます。
インナー通そうとしても簡単に入らないので、やはりヘッド回りの配線にかなり無理があるようです。
通ってしまえばなんともないのですが、メンテが大変だと思います。
それはこのフレームに限らず、フル内装のフレームの宿命だと思います。ケーブル交換作業の工賃も高くつくと思います。

ROTORを使用するので、BBはROTORのものを圧入します。
新興ブランドにありがちですが、やはりBBの精度は物足りないです。この辺りは検品の基準の差かもしれません。

チェーンはTOKENのビッグプーリーのカラーに合わせてKMC X11SLのゴールド・ブラックをチョイス。
他はすべてブラックなのでチェーン周りが映えます。
やりすぎ感がなくてクールです。

タイヤはパナレーサーのニューモデル「AGILEST」。
触っただけでわかります、コレ、めっちゃグリップします。
そして軽いです。
異物を拾いやすいかもしれないので、ライド後はタイヤを点検することをお勧めします。

完成品を改めてみてみます。
はい、カッコいい。
ビッグプーリーにROTOR、そしてカラーチェーンを入れると、普通はゴチャゴチャして個人的には嫌な感じになりますが、今回はめちゃくちゃクールでセンスあるまとまりになっています。

もちろんパーツチョイスが完成形なのでこのルックスですが、とはいえこのフレームが10万円台は恐ろしいです。

もう5万円高くなってもいいので、ちょっとした問題点が改良されると本当に魅力的なメーカーになると思います。

新興ブランドに対するショップ対応と大手メーカーの高級路線化

ショップによってはこういうメーカーは全然ダメというところもあるようです。
たしかにショップは大変だと思います。
大手メーカーの高級レーシングバイクを買ってくれる方がありがたいでしょう。

しかし実際触った身としては、じゃあこの3倍の価格のものたちが、価格に見合った妥当なクオリティだからおすすめです、という言い方はできないです。

どこのメーカーだってはじめは試行錯誤するものです。
ダメな点は指摘すべきで、安いだけで持ち上げるのは間違いです。ただそれをダシにして既存の価値を高めるというやり口も健全ではありません。

ハイエンドモデルの技術が革新的に進歩して、その結果高くなるのは全く問題ないと思います。
むしろそれらは必要なことです。
ただそれを一般ユーザーに進める手口が良くないです。
そして入り口の敷居は無闇に上げてはいけません。
新興ブランドの台頭が、大手メーカーの高級化(あるいはショップの押し売り)の流れを止めてくれることを期待したいです。

とはいえ、誰にでもこういうブランドをお勧めすることはできません。
とくに一般のサイクリストにとってハンドル・ヘッドチューブケーブル内装のフレームは、メリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいです。
ある程度メカに理解があり、新興ブランドのクオリティに理解があり、多少工賃が高くなっても持ち込み作業を嫌な顔をせず受けてくれるショップがあることが前提です。
ショップレベルでこういったバイクを組むのは、いろいろとあるので、なかなか大変です。
おそらく多くのショップは対応しないと思いますし、そういうショップが行きつけの場合は顔を出しにくくなるかもしれません。ちょっと村社会的なところがあるので。
その辺を理解した方は冒険してみる価値があると思います。

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