先日、UCIから車両規則に関する変更が告知されました。
ロードレースにおけるリムハイトが65mmまでになったり、フォーク幅の規定などが盛り込まれましたが、もっとも影響が大きいのはハンドル幅の変更でしょう。
400mm未満(外-外)のハンドルが使用禁止に
the minimum overall width of handlebars (outside to outside) for mass start road and cyclo-cross events will be set at 400mm, with an inner width of 320mm between brake levers.
The UCI approves the 2026 calendars for the UCI Women’s WorldTour and UCI WorldTour, and takes measures to support the development of cycling
この通り、ハンドル幅の最小が外側から外側で400mmまでと規定されました。
またレバー間距離が320mmまでとなります。
これらの規定は2026年1月1日から適用されます。
近年のナローハンドル、ㇵの字レバーブームを考えると、影響を受けるライダーは多そうです。

実際、これらの数値はどの程度のものか、私の機材で確認しました。
私はWINSPACE ZERO SL 380mm ハンドルを使用しています。
このハンドルは若干フレアしており、下側が400mm(中心-中心)となります。
規定の「ハンドルの最小部分」はだいたいブラケットの位置になります。
ここの外側から外側からを計測すると403mmくらいなので、このハンドルは大丈夫です。

次にレバー間の幅については、ブレーキレバーの内幅となっておりますが、一番狭いフード部分の間の距離と仮定します。
アルテグラDi2(ST-R8170)を標準もしくはやや内よりにレバーを取り付けており、その状態で328mmくらいです。
つまり、380mm幅のハンドルの場合は、ほとんど内に絞ることはできないということになります。
これらはレバー形状によって左右されると思います。

規定変更の理由とその影響について
今回の変更に至った理由としては下記のように述べられています。
The increasing speed of races and the safety implications of developments in equipment are one of SafeR’s main areas of focus.
The UCI approves the 2026 calendars for the UCI Women’s WorldTour and UCI WorldTour, and takes measures to support the development of cycling
SafeRとは2023年にUCIと他各協会や選手会が合同で設立したもので、主にワールドツアーやプロシリーズのレースの安全面に関する分析や監査を担っています。
そこが2024年の該当のレースにおける落車事故件数は497件と発表しました。
レース数は100レース強だと思うので、1レース4,5件の事故が発生していることになります。
これは事故件数なので、落車した人数はもっと多いことになるはずです。
SafeRが立ち上がってまだ日が浅いので、過去の統計データとの比較はできませんが、選手たちから近年の高速化により危険が増している、コントロールできないという声が出ており、それが実態なのだと想像します。
これに対して何かしらの規制が必要だと判断した結果が今回の規則変更になったのでしょう。
また今後ギア比の制限を設けることも検討していると触れられています。
確かに行き過ぎたハンドルのナロー化はエアロダイナミクスが良くなる代わりに、コントロール性が損なわれます。
その意味で今回の変更によって、規定が分かりやすくなり、レバー形状やハンドル形状による抜け道が減ったといえます。
しかし、この規則を小柄な人にも一律に適応するのは明らかに不公平に思えます。
TTに関しては身長による規定があるので、今後、本件も同様の処置があっても良いのではと感じます。
個人的な見解
今回の規則変更に不公平感があったり、この変更がどの程度安全に繋がるかの検証をする必要はありますが、安全面に関する大幅な改善は強行的にでも行うべきと考えています。
前回の世界選手権ではジュニアの女子選手が落車で死亡し、その前年はツール・ド・スイスでジーノ・メーダーが亡くなりました。
日本でも同年にツール・ド・北海道で、さらに前年は鹿児島のインカレで死亡者が出ています。
国内でもアマチュアレースを含むと死亡事故は少なくないです。
死亡にまで至らずとも、骨折等の重傷事故は頻繁に、当たり前のように起きています。
競技中の事故でここまで酷い競技はそうはありません。
世界選手権でのUCIの対応についての不信感や、今回の規則変更に対する不満は理解できますが、安全面への取り組みは必要不可欠です。
文字通りに「命を懸けた」競技なんてものであってはならないですし、販売している我々も無関係であるはずがないという意識を持ちたいです。