待ちに待った東京オリンピック。世界中のトップクラスの選手たちが日本の道路を走る。
レース距離は234km、獲得標高は4865mという過酷なレース。
今日は仕事が入っており、店を閉めることができなかったので、観戦に行けなかったが、
それがなければ間違いなくこの場所に行っていただろうと思いながらネットのライブ放送を観戦。
屋外のラインレースの観戦を自粛という全くもって理解できないアナウンスがされており心配したが、
沿道にはそれなりの観客があり安心した。
仕事の傍らだったので、メモは取っていないので、詳細なレポートではないうえネタバレになるので、
観ていない方は衛星放送の再放送を観てもらいたい。
オリンピックに相応しい熱い戦いだった。
オリンピックに出場している選手のうち、約4割がツールドフランスに出場しており、
その中には多数の有力選手たちが含まれており、まさにツールの再戦ともいえるレースである。
今回の注目は、国別でみるならベルギー対スロベニアの戦いで、個人で見るとベルギーのワウト・ヴァンアールット、レムコ・イヴェネプール、スロベニアのタデイ・ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ。
これらに対して、ツール総合3位のリチャル・カラパスやバルベルデ、ニバリ、アダム・イエツ、アルメイダあたりが注目されていたが、ツールで調子のよかったマイケル・ウッズやバウケ・モレマ、オリンピックにフォーカスしてきたフルサンも有力。
日本からは新城幸也、増田成幸が参戦。納得の人選だが、今回のスタートリストを年齢順に並べると、
それぞれ3、6番目と、世界的にもベテランの年齢にあたる2人が出場しているというのが、国内ロードの現状である。
さて、234kmの長旅がスタートし、まずはピーター・サガンの兄ユライ・サガンやニック・ドラミニらが積極的にアタックし、8人の逃げを形成し、プロトンから約20分ほど大きく先行した。
集団はやはりチーム力のあるベルギーとスロベニアが牽引。
なかでも前回オリンピックチャンピオンのベルギーのグレッグ・ヴァンアーベルマートと、スロベニアのヤン・トラトニックの牽引が強力だった。
不運にもイギリスのゲーガンハートとゲラント・トーマスが落車。
トーマスに至っては1週間前にツールで落車したばかり。どうにも落車の多い選手でになってしまった。
富士山麓に入り、残り約90km程度で増田がプロトンから脱落、続いて新城も徐々に遅れる。
新城とほぼ同時にバルベルデも遅れるが勾配が緩るみ、下りを利用して2人は何とか集団に戻る。
残り50km付近で逃げが吸収され、カウンターでイタリアのカルーゾが動き、波状的にニバリやイヴェネプールらがアタックするも吸収。
そのまま三国峠に入り、強力な牽引を見せたトラトニックがようやく集団から遅れる。
三国峠はやはり強烈な勾配で、残り40kmを切ったところで、新城とバルベルデやはり同時に脱落した。
勾配がかなりきつくなってきたところで、ポガチャルがシッティングのまま加速、そのまま先行。
この動きによりログリッチやイヴェネプールも遅れ、集団が破壊される。
体重のあるヴァンアールトは、瞬発的な動きには遅れるが、自分のペースでしっかり追走。
三国峠を越えてヴァンアールトらが合流し、10人前後の先頭グループが形成される。
この後数名が追い付いたり、遅れたりを繰り返す展開に。
三国峠を終えた以上、これ以降きつい登りはなく、このままいくとシャンゼリゼを制するスプリントを持つヴァンアールトが断然有利。
何とかヴァンアールトに足を使わせたいウッズ(カナダ)、クウィアトコフスキー(ポーランド)、マクナルティ(アメリカ)、モレマ(オランダ)、フルサン(デンマーク)らは籠坂のそこまできつくない登りで順番にアタック、他は前を引かず、ヴァンアールトに追わせるという展開に持ち込む。
カウンターアタックの応酬が繰り広げられ、逃げては捕まえてを繰り返すも、きつい勾配がないため決定的な動きにはならず。
そして残り25km、攻撃が収まり少し緩んだ、そのわずかな間隙を縫うアタックを決めたのが、カラパス(エクアドル)とマクナルティ。
ヴァンアールトが強さを見せ過ぎたが故、追走はなかなか回らない。
我慢できずにポガチャルも引き始めるも30秒以上開いたタイム差はなかなか埋まらない。
ゴール地点である最後の富士スピードウェイに入る短い登りで、カラパスがマクナルティを引きちぎり、そのままフィニッシュ。
マクナルティは限界だったのだろう、集団に吸収される。
集団はゴール前でスローダウンし、完全にスプリントモード。
ヴァンアールトが圧倒的かと思われたが、ポガチャルのスプリントも強力。
わずか数センチ差でヴァンアールトがポガチャルを制し、徹底マークされた今回のオリンピックは銀メダルに終わった。
新城はやはりバルベルデと同じ集団でゴール。35位と健闘した。
ヴァンアールトやポガチャルは非常に強力な選手だが、力量や特性が知られるようになった以上、逆に力押しでは勝ちにくくなるというのが、
サイクルロードレース、特にワンデーレースのおもしろいところ。
あるいは、それでも力でねじ伏せてしまうという展開を期待させるのがロマンで、この競技の魅力が詰まった、とても良いレースだった。