油圧ディスクブレーキが一般的になりつつある中、乗り換えたくてもパーツが手に入らない、バイクが入荷しないという現状に嘆いている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、改めてロードバイクにおけるディスクブレーキのメリット・デメリットをまとめてみました。
人によってはまだリムブレーキに乗り続けるモチベーションになったり、あるいは早く乗り換えたい衝動を加速させることになったり、またあるいは、パーツが手に入らないなかで、ある光明を得ることになったり…
ディスクブレーキのメリット・デメリットをまとめつつ、簡単な仕組みの説明に基づいて、どういう用途や環境での使用でメリットのあるものなのかを解説します。
売りたい側の謳い文句やそれに乗っかった記事や噂、あるいはそんなもの必要ないという意見。
巷で言われていることが本当なのか。この記事を読むと、見当違いな認識をしていたことに気付かされるかもしれません。
油圧ディスクブレーキについて
油圧ディスクブレーキは様々な車両に導入されていますが、自転車では2000年前後にマウンテンバイクで普及しましたが、モーターサイクルではもっと昔から導入されています。
またロードバイクで普及したのはほんの数年前で、まだ歴史が浅いということを知っておきましょう。
また重量や速度が全く異なる乗り物なので、自動車やバイクでのメリットがそのまま適用されるはずがないということも頭の片隅に置いておきましょう。
油圧ディスクブレーキのメリット
さて、油圧ディスクブレーキのメリットですが、
①レバーを引く力が小さくても、大きな制動が得られる
②雨天時でも安定した制動力を発揮
③制動開始からロックまでのコントロールがしやすい
ブレーキングに直接関係するメリットは簡単にまとめるとこんな感じです。
①に関しては少し理解が難しいかもしれないので、よくわからない人は流してもらって大丈夫です。
これはパスカルの原理により実現するもので、簡単に言うと、
「容器の中にある液体のある一点に力を加えると、容器の形状に関係なく同じ圧力をすべての液体に伝える」という原理で、これを応用すると、「レバー側の小さなピストン」でオイルを圧縮して、離れた位置にある「ブレーキキャリパー側の大きなピストン」を同じ圧力で押すことができます。
これが小さな力で大きな制動を発揮できるという仕組みです。
なぜオイルを使うのかというと、粘度や圧縮率が優れているからです。
また、温度による動粘度の変化や、金属の腐食などにも優れているのですが、この辺はそういうものということで流しましょう。
②は、リム上部のブレーキ面を挟むリムブレーキにおいて、リムにはホイールの主要部としてパワーを伝達し、衝撃に耐えるための強度と、タイヤをはめ込み保持するための強度が求められ、さらにブレーキキングによる熱や摩耗に対する強度が必要で、必然的にリムの重量が増し、加工の自由度が下がります。
しかしディスクブレーキのディスクローターは、それらから独立しているため、熱や排水に優れた形状に加工することが可能です。
通常、雨だとパッドとローター(またはリム)との摩擦が小さくなるため、より大きな力でパッドを押す必要がありますが、
①の特徴によって、力いっぱいレバーを握らなくても、雨天時でもしっかりとした制動が可能となります。
③に関しては、まずパッドとローターの距離が近いことと、リムに対してディスクの直径がとても小さいということ、さらにレバーを握る力は小さいほうがコントロールしやすいので、ここでも①のメリットが生きてきます。
他にも、リムはブレーキに対する強度が必要ないので、リム自体が軽くできるということや、
ワイヤーと違ってオイルは摩擦抵抗をほとんど受けないため、配線が複雑なケーブル内装のハンドルやフレームでも、ブレーキングに影響を及ぼさないというメリットがあります。
油圧ディスクブレーキのデメリット
逆に油圧ディスクブレーキのデメリットとしては、
①重量が増加しがち
②整備が面倒、取り扱いがシビア
③値段が高い
などがあげられます。
①に関しては、レバーやブレーキキャリパー、ディスクローター、ハブ自体の重量が嵩むということと、
ブレーキキャリパーをマウントするための強度を確保したりするため、フレームもやや重たくなる傾向にあります。
②は、オイルを扱う以上どうしても整備が面倒になります。ワイヤー引きのブレーキでもワイヤーを交換するように、
オイルの交換も定期的に必要ですが、オイル内に空気が入ってしまう、いわゆるエアが噛んでいる状態になると、
ブレーキの利きが甘くなってしまいますので、個人での作業は難しいと考えるべきでしょう。
またディスクローターが入っていない状態でブレーキレバーを握ると、ブレーキキャリパーのピストンが押し出され過ぎて、ピストンを手動で戻す必要があります。これもエア噛みの原因になったりします。
またディスクローターとブレーキパッドとの距離が大変近いため、ディスクローターがほんの少しでも歪むと、すぐにパッドにあたってしまうようになります。
MTBやモーターサイクルではちょっと擦っているくらい気にならなかったりするのですが、ロードバイクでディスクを始めて扱う人にとっては、気になって仕方がないでしょう。
これの修正も少しコツがいるので、リムブレーキのように簡単にはいきません。
またホイールによっては、ディスクローターの取り付け位置がごくわずかにずれていたりして、
ホイールを取り換えるとパッドにタッチしてしまうということもあり、交換の度に調整が必要になるケースもあります。
これらのことから、輪行には不向きといえます。
もちろん上手いやり方で慣れてしまえば問題ありませんが、慣れるまで不安でしょうし、実際着いた先でトラブルになったら大変でしょう。
気軽に輪行したいという方にはリムブレーキの方が良いでしょう。
これはより優れた輪行バッグや輪行方法の発明によって、解消されるかもしれません。
③、そのまんまです。レバーが特に高いです。フレームも高くなっています。
当然ホイールもリムブレーキとの互換はありませんので、最初は特に出費が大きくなります。
それに加えて、ほとんどのコンポーネントがなかなか手に入らない状態です。ディスクブレーキ系は特に致命的です。
品物によっては1年先の入荷といった状況です。
その他としては、モデルによってはレバーの頭が大きくなるということがあげられます。
Di2はそこまで差はありませんが、ワイヤー引きの変速だと、レバーの上部が大きくなりがちで、人によっては握りにくいとか、不格好とかがあるかもしれません。
これはおそらくこの先のモデルチェンジで解消されるだろうと思っています。
ディスクブレーキのメリットを正しく理解する
さて、ここまでは一般的によく言われていることだと思いますが、よりロードバイクの特性に照らし合わせて考えてみようと思います。
ロードバイクのタイヤはマウンテンバイクと比較すると非常に細く、また車体自体が軽く、乗り手が前荷重なのが特徴です。
つまりグリップ力が低く、荷重移動がしにくいといえます。
どれだけ制動力が大きくても、タイヤのグリップを越えてはいけないので、ロードバイクにおいて過剰に強力なブレーキは必要ないということです。
マウンテンバイクと比較するとロードバイクは速度が高いので、強いブレーキングが必要と言われることもありますが、これも結局はタイヤのグリップを越えてはいけないので同じことです。リムブレーキでも強く握ればロックします。
マウンテンバイクでは多少ロックさせることもありますが、ロードでロックするということは、ほとんどが転倒に繋がります。
したがって、ロードバイクのディスクブレーキにおいては、強いブレーキングを売りにするのではなく、メリットの②の説明通り、
高い制動を発揮している中でもブレーキコントロールに優れると謳うべきでしょう。
ただし、雨天時におけるディスクブレーキのブレーキングは絶大です。
リムブレーキに比べるとメカニカルのディスクブレーキでも十分その恩恵は得られますが、油圧ディスクブレーキだとさらに良いです。
これもメリットの②に説明する通りです。
まとめ(メカニカルディスクブレーキという選択も)
ここまで話してきましたが、私自身は今後もディスクブレーキ搭載のロードバイクを使用し続けると思います。
唯一気になるのは入手がし辛いという現状です。
それ以外に関しては、メリットを上回るデメリットや、リムブレーキのメリットを感じません。
もちろんマウンテンバイクは現状油圧ディスクブレーキしか考えられませんが。
ただし、ディスクロードを誰にでもお勧めするかといえば、そんなことは全くありません。
理由は上に述べてきた通りですが、もちろん雨天時のメリットやブレーキングが楽ということは非常に魅力的ですが、コストや輪行、メンテナンスのシビアさ、入手が困難な現状などを乗り越えて、誰にでもお勧めできるとは思えません。
そんな中で、今までは度外視されていたメカニカルディスクブレーキを本気で作ってきたグロータックの「EQUAL」は、リムブレーキからの乗り換えを検討している方や、取り扱いに不安がある方にとっても非常に有力な選択肢になり得ます。
何しろブレーキ以外のコンポーネントがそのまま使えるのはとても魅力的で、また油圧ディスクブレーキまでのステップという考え方もできるかもしれません。
EQUALについては別記事で紹介します。
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